ロシア旅行記:4日目
阪急交通社ツアー「お1人様参加限定:ロシア7日間」
-2020年3月12~18日
ロシアのダヴィンチ作品
ロシアの観光で人気のある場所と言えば、こちらのエルミタージュ美術館(Hermitage Museum)内の見学。絵画や美術品に興味がある人にとっては絶対に訪れたい聖地のような場所でもあります。
エルミタージュ美術館にて
by ベルナルディーノ・フンガイ(Bernardino Fungai)
1514年頃の作品で古代ローマ時代の軍人スキピオ・アフリカヌスで、第二次ポエニ戦争でハンニバル軍を破り戦争を終わらせた英雄でもある。このエリアはイタリア画家によるゾーンになっていて、ルネッサンス期前後の作品が多く展示されている。
お次の作品は15世紀前半にフィレンツェで活躍した、修道士でもあり画家だったフラ・アンジェリコ(Fra’ Angelico)の作品。主に宗教関係のモチーフを描いた彼は、”まれに見る完璧な才能の持ち主”とも称される位の人物だったという。
by フラ・アンジェリコ(Fra’ Angelico)
「フィエーゾレの修道士ジョヴァンニ」とも呼ばれたフラ・アンジェリコは、実際にそこで1420年代に働いていたフィエーゾレの聖ドミニコ修道院の食堂の壁に描いた。背景は水色になっているが、元々は赤地に金色の星が描かれていたのが修復中に判明したそうだ。19世紀後半にその修道院が閉鎖されて、この絵はフィレンツェの画家を経て、1882年にエルミタージュ美術館へとやってきたという。
by ベルナルディーノ・フンガイ(Bernardino Fungai)
by アンドレア・デル・ヴェロッキオ工房(Andrea del Verrocchio-school)
右側の作品は1470年以前の物で、レオナルド・ダ・ヴィンチやボッティチェリも修業し、所属していたヴェロッキオ工房のもの。
by ラファエロ・ボッティチーニ(Raffaello Botticini)
ただ客観的にイタリアの絵画を眺めると、その殆どがキリスト教をテーマにした作品ばかりである。そういった事を考えると、いかに当時イタリア国内ではカトリックが幅を利かせていたのかが分かるような気がする。
絵画よりも早い段階で造られていた像の方が、個人的には立体なので分かり易くて好きである。
by ベネデット・ブグリオーニ(Benedetto Buglioni)
もしこんなのがその辺の家に飾られていても、イタリアの歴史的な価値のある作品だとは全然思わないだろうな。。
引き続きイタリア絵画が展示されている部屋を進んで行きます。
by フランチェスコ・フランチャ(Francesco Francia)
聖ヒエロニムスは古代ヘブライ語で書かれていた新約聖書を、ラテン語に翻訳したとされる人物。
by リドルフォ・ギルランダイオ(Ridolfo del Ghirlandaio)
「う~~~ん、ドコかで見たような気がする絵だな~~??」と思っているけど、全然分からない。
by ロレンツォ・コスタ(Lorenzo Costa)
イタリアの絵画は15~16世紀のルネッサンス期に最も栄えた。その背景にはメディチ家という世界的な銀行家が、その莫大な富を芸術作品に注ぎ込んだ為だ。芸術というのは評価が難しい物で、本来無くても人間としての生活は成り立つ。しかし芸術がある事により、人間はより高いレベルで生活を過ごす事が出来るのだ。
世界的に歴史を見ても莫大な富を所有していた権力者が、絶頂期に芸術にハマり、その殆どを芸術に注ぎ込んだ事により政権が崩壊していくという歴史が多い。しかしそういう芸術に莫大な資金を捻出した人々の行為があって、今ここでこれだけの芸術作品が見られるのである。かのレオナルド・ダ・ヴィンチもスポンサー無しでは、あれだけの絵画を作る事すら出来なかったハズだ。そう思うと桁外れの浪費とも思える行動は、まさにギャンブル的な人類の宝を創造する行動である。
by フィリッポ・リッピ(Fra Filippo Lippi)
by サンドロ・ボッティチェッリ(Sandro Botticelli)
初期ルネッサンス期に活躍したボッティチェッリの絵と、左にはその師匠であるフィリッポ・リッピが共演している。ボッティチェッリと言えば、代表作はウフィツィ美術館に展示されている『プリマヴェーラ(Primavera)』でも有名である。
聖ヴェロニカがヴィア・ドロローサを歩いている途中のキリストにハンカチを差し出す。キリストがそのハンカチで汗を拭ったら、ナントそこにはキリストの顔が浮かび上がったという。そんな様子を描いた”ヴェロニカのハンカチ”が飾られているキリストのお墓から、大天使ガブリエルがキリストを天国へと導く姿を描いている。
キリスト教の有名なワンシーンを描いた構図ばかりね!
「レオナルド・ダ・ヴィンチの間」にて
そして次にやって来たのは世界的にも最も高名な画家であるレオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci)の名画が2枚も展示されている部屋で、「レオナルド・ダ・ヴィンチの間」と名付けられている。
芸術に疎い人でも知っているダヴィンチの、ロシアにある作品がここで見られるのよね!
ただこのような部屋の名前になっているけど、この部屋に飾られている絵が全てダヴィンチの物ではありません。画家以外の才能にも溢れていたダヴィンチが残した作品は、現存している物で全世界で15点程しかないのである。というのは彼は気に入らない仕上がった作品は破り捨てて、1つの絵に対して何年も掛けて手直しを施した為に生み出した作品が少ないとされているそうだ。
by レオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci)
こちらはエルミタージュ美術館でも、最も有名な作品である。エルミタージュ美術館で購入したガイドブック2冊共に、表紙の写真にはこのリッタの聖母が使われていた。
この絵は1470年代終わりにミラノ公のモロー伯爵に使えた時に、描かれた作品とされている。その後の所有者がミラノ公リッタ伯爵になった為に「リッタの聖母」と呼ばれるようになったそうだ。ちょっと分かりにくいけど幼子の左手には、赤い頭のヒワという鳥が握られており、その後幼子に訪れる受難を表していて、その時に流した血がこの鳥の赤い頭に表現されているという。
またダヴィンチの代表作でもある『モナリザ』にもあるように、聖母マリアの微笑み加減が絶妙に描かれており、微笑んでいる表情には見えないものの、真顔でもなく優しい顔つきをして微笑んでいるように見えてしまうのである。
「リッタの聖母」を眺める 動画
ダヴィンチの村で生まれたレオナルドという名前が付けられているレオナルド・ダ・ヴィンチ。解剖学にも没頭したと言われており、人体の皮膚の内側にある筋肉や腱までもを意識して描いた作品は見応え充分である。
夏場の世界から多くの観光客が集まるシーズンだと、もっと多くの人でこの部屋は溢れているという。これだけ少ない人しかいない時にダヴィンチの絵画を見れるのは、とてもラッキーだとか。
絨毯って床に敷くものだと思っていたけど、これだけの装飾が施されていたら芸術作品になっているので、タペストリーとして壁に飾れる。そういえばトルコの絨毯屋さんを訪れた時に現地の販売員は、さかんに「タペストリーとして部屋にも飾れます!」を売り文句に絨毯を売ろうとしていたな。。
ただし2点のダヴィンチ作品の内、残り1点の『花を持つ聖母子(ベアヌの聖母)』は残念ながら貸し出し中・・・。
こちらの絵は貸し出される事が多いのよ!
ダヴィンチの絵画だけではなく、このように部屋自体もとても豪華である。絵画ばかり眺めるのもいいけど、このように部屋全体を俯瞰的に眺めるのもいいかもしれない。
豪華に細かい装飾に凝った扉が待ち受けている。
21世紀の時代でもまだこのイタリアのルネッサンス期が黄金時代とされているので、その時代の芸術に注ぎ込まれた資金がいかに莫大だったかを物語っていると思う。単純に注ぎ込んだ資金量に比例するとは言わないけど、少なからずそれに見合った結果は出ていると思う。
この部屋には綺麗な天井画も描かれているが、残念ながらダヴィンチ作品を目の前にした観光客達はその絵に釘付けなので、天井画を見る余裕も無さそうだ。。
by ティツィアーノ・ヴェチェッリオ(Tiziano Vecellio)
こちらはティツィアーノ・ヴェチェッリオは、16世紀のヴェネツィア派画家の中でも最も重要だった1人とされている。そんな彼の傑作である『懺悔するマグダラのマリア』は何点か同様の画風で描かれている。
頭蓋骨の上に聖書を置き、地上生活の無常さを表しているとされるこの絵。マグダラのマリアと言えばキリストが磔にされて亡くなった時に、香油の入った壷を持って来てキリストの遺体に塗ろうとしていたとされている事から、左側には少し分かりにくいけどその壺が描かれているという。
こちらにはティツィアーノ・ヴェチェッリオの絵画が2枚、接近して展示されている。
by ティツィアーノ・ヴェチェッリオ(Tiziano Vecellio)
こちらの女性はギリシャ神話に出てくる「ダナエ」という女性で、父であるアルゴス王アクリシオスは神託で「あなたは孫に殺される」と告げられて、娘のダナエを地下牢に監禁する。そんな美しいダナエに惹かれたのが全能の神ゼウスで、地下牢に忍び込み、黄金の雨に姿を変えてダナエの元へとやって来たシーンを描いている。
ちなみにこの時に身籠った子供は英雄ペルセウスとなり、有名なメドゥーサに対して鏡の盾を使い、打ち取ったとされる。そしてその後とある競技会に出たペルセウスが投げた円盤が、ある老人に直撃しそのまま亡くなったという。それは孫の姿を密かに覗きに来ていたアクリシオスだったそうな。
この「ダナエ」は色んな画家によって描かれており、この作者ティツィアーノ・ヴェチェッリオだけでも最低5点の絵を残しているそうだ。右側の老婆が受け止めるのは、黄金の雨が金貨のように表現されているという。
by ティツィアーノ・ヴェチェッリオ(Tiziano Vecellio)
エルミタージュ美術館では正直、照明が絵画に反射して写真の一部が光ってしまっていて、ちょっと残念だった。今の時代は写真撮影全盛の時代なので、もう少し絵に反射しない照明の設置を心掛けてくれれば有難いと思う。
by ティツィアーノ・ヴェチェッリオ(Tiziano Vecellio)
明日訪れるファベルジェ美術館で絵画が飾られていた部屋は、全体的に暗くなっており、その絵の重要な部分にライトを当てていたので、とても写真写りが綺麗に撮れた。これからは単に絵画を飾るだけではなく、その見せ方にも特徴を見出していかないといけない時代になって来ているのかもしれない。
ちなみに翌日訪れたファベルジェ美術館では、絵画が展示されていた部屋内の照明は落とされていて、逆に絵画の部分だけにライトが当たるように設定されていた。なのでこのように写真を撮っても殆ど反射せずに、まるで絵が光っているかのように見えたのである。
by ティツィアーノ・ヴェチェッリオ(Tiziano Vecellio)
絵画だけを見ていると、神の子イエス・キリストよりも包容力がある聖母マリアの方が家に飾るには好まれたのかもしれない。このエルミタージュ美術館に展示されている作品を見ていると、それが如実に表れているようにも思う。
by ティツィアーノ・ヴェチェッリオ(Tiziano Vecellio)
こちらもティツィアーノ・ヴェチェッリオが晩年に描いた作品で、聖セバスティアヌスという3世紀のキリスト教の聖人を描いたもの。当時のローマ皇帝ディオクレティアヌスは増え続けるキリスト教徒にある程度許容な立場を取っていたが、ギリシャの神々を信仰せずに軍隊から離脱する行為が増え始めたのでキリスト教の弾圧を行った。
その弾圧下で「最後の大迫害」と呼ばれるキリスト教徒の迫害で、数千人が処刑された。その代表がこの聖セバスティアヌスで丸太に後ろ手で繋がれた状態で、弓を放たれて処刑される。ただこの弓だけでは死ななかったらしく、その後に妻であるイレーネに自宅まで連れて帰られて回復するもディオクレティアヌス帝に撲殺されてしまったそうな。
by ティツィアーノ・ヴェチェッリオ(Tiziano Vecellio)
こちらもティツィアーノ・ヴェチェッリオの作品。彼は神聖ローマ帝国カール5世やスペイン王フェリペ2世などのパトロンの庇護を受けて、素晴らしい作品を送り出したのである。
そんなティツィアーノ・ヴェチェッリオの作品が並ぶコーナー。ただ単純に美術館内を見学しているだけでも意外と疲れるので、所々に設置されている椅子などに座って一息付いた方がいいと思う。
by ティツィアーノ・ヴェチェッリオ(Tiziano Vecellio)
ティツィアーノ・ヴェチェッリオは長寿の画家でもあったので、沢山の作品が現存している。
by パオロ・ヴェロネーゼ(Paolo Veronese)
by パオロ・ヴェロネーゼ(Paolo Veronese)
ティツィアーノ・ヴェチェッリオの描く絵画も、そのパトロンに合わせて変化していったという。当時でも自分の描きたい絵を描くのでなく、パトロンであるスポンサーの望む絵を要望されたのであろう。芸術家といえどもお金を提供してくれる存在が無ければ、成り立たなかった職業である。
ましてや現代みたいにインターネットを使って地球の反対側に住む人に絵を売る事さえ出来なかった当時は、数少ない大事なスポンサー探しに苦労した事だろう。
by ベネデット・カリアリ(Benedetto Caliari)
そう考えると今の時代の芸術家に比べて、数倍も芸術家を維持する事が難しかったのだろう。
正直あまり絵画系などの美術品にはそこまで教養も興味もなく才能もないボクは、真剣に絵画を見ていると疲れて来るのである。。
だからこの辺に展示されていた陶磁器やお皿などを見て、一休憩するのである。
今回はいかにも見た目が画家っぽい、中年の日本人女性が1人で日本語の話せるガイドさんを雇ってマンツーマンで説明を受けていた。それ位の人であればこのエルミタージュ美術館の芸術を堪能できるけど、普段あまり何事も深く考えないボクレベルだと”豚に真珠”のような感じである。。
by フェデリコ・バロッチ(Federico Barocci)
ボクの目からすると「実は先日骨折して、実は左手にギブスをはめているんですよ。でもそれがちょっと恥ずかしくて、敢えてブカブカの袖の服を着て誤魔化しているんです。。」という顔をしている青年にしか見えない。。
by ドメニコ・ディ・パーチェ・ベッカフーミ(Domenico di Pace Beccafumi)
まあ人それぞれに考えている事は違うので、同じ絵を見てもそれぞれに受け止め方や解釈が異なるので、それぞれが思った通りに感じればいいのかもしれない。逆に下手に絵画通っぽく、堅苦しい表現を使わずにありのままの自分を出して、気楽に受け止めればいいのである。
という事でこれから当分このようなエルミタージュ美術館での絵画鑑賞は続くのである。
こんな旅はまた次回に続きます!
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