約1.1mの明石海峡大橋ケーブルは、実は途轍もない強度を持つ【明石&加古川旅13】

明石&加古川旅(2023年)-13

訪問:2023年1月下旬(1泊2日)

127×290本の強度!

明石海峡大橋の脇にあった建物なので気軽に寄り道しただけの「橋の科学館」だけど、館内には世界最大級の吊り橋である明石海峡大橋建設に活用された技術が数多く説明されていて、かなり内容が濃い場所となっていた。

 

【橋の科学館】

住所:神戸市垂水区東舞子町4-114
営業時間:9時15分~17時頃(※定休日:月曜日)
電話番号:078-784-3339
入館料:大人310円/小中学生150円/65歳以上200円

 

 

 

「橋の科学館」の見学

ここからは建物前にもベンチに改造されていた、明石海峡大橋に使われている橋桁を吊っている太いケーブルについての説明が始まる。

 

明石海峡大橋に使われているケーブル1本の太さは正確には1.122mとなっている。

そのケーブルの中身はというと、5.23mmの高強度銅線(素線)が127本もハチの巣形状の六角形に束ねられて、それが更に290本も束ねられて1本のケーブルが仕上がるという。

 

ケーブルの構成

高強度銅線(素線)5.23mm

 

 ↓↓127本が束ねられる↓↓

 

ストランド 59.58mm×67.99mm

 

 ↓↓290本が束ねられる↓↓

 

ケーブル 1.122m【完成品】

 

明石海峡大橋でケーブルに使われた素線は通常の吊り橋の引張強度160キロに比べて、ケイ素1%を加えた亜鉛メッキ銅線が採用されて180キロの引張強度が実現された。

 

 

吊り橋にかけるケーブルは従来の素線であれば片側2本⇒両側で計4本が必要だったが、180キロの引張強度が実現された為に、片側1本⇒両側で計2本のケーブルになったという。

 

こちらはその亜鉛メッキ銅線が採用された素線が、六角形に127本も束ねられた「ストランド」

5.23mmの素線が隙間なく束ねられて、59.58mm×67.99mmの大きさの1本の鋼の束に変身するのである。

明石蛸一郎
明石蛸一郎

六角形が最も衝撃吸収に強いタコ!

 

5.23mmの素線を17万倍という考えられない程の倍率で見てみると、こちらの模型のように「フェライト相」という柔らかくて延びやすい純鉄部分と、「セメンタイト相」という硬くて脆い鉄と炭素の化合物が交互にくっつく層を成しているという。

 

 

そんな強大な引張強度を持つケーブルと橋桁の間を繋ぐのが「ハンガーロープ」で、これはケーブルの素線を85本重ねた直径85mmのロープが使われている。

 

パイロットロープの渡海 -明石海峡大橋ケーブル工事-

そしてケーブルを敷く前にその足掛かりとなる「パイロット・ロープ」というワイヤーが先に架けられるが、明石海峡大橋では航行する船が多い事もあって、ヘリコプターでの引き渡し作業が行われた。

 

吊り橋のケーブルを架設していく際には、まず「パイロット・ロープ」の架設から始まり、次に「キャットウォーク・ロープ」というパイロット・ロープを利用してその周囲に太めのロープを10本程架設して、更にその太くなったロープに金網や足場などを設置し「キャットウォーク・床組」を設営する。

朋ちゃん
朋ちゃん

猫も歩ける足場かな~?!

明石蛸一郎
明石蛸一郎

人間も歩ける足場タコ!

そしてその足場を造った状態から、ケーブルの構成物となるストランドが架設されていき、合計290本のストランドが架設された後にそのケーブルを束ねるケーブルバンドが巻かれて、そこからハンガーロープが垂らされて橋桁に繋がれる。

 

こちらにはケーブルの構成物となっているストランドのサンプルが展示されているが、高強度の素線を大量に生成するには時間が掛かる為に、ストランドの製作は架設の数年前から始めないと間に合わないという。

 

127本の素線が束ねられたストランドも、このようにホウキの先みたいに結束が解かれた部分はバラバラになっている。

オカン
オカン

ストランドはホウキと同じ意味やな?!

明石蛸一郎
明石蛸一郎

違うと思います・・タコ!

 

明石海峡大橋でパイロット・ロープはヘリコプターによって架設されたのは、1993年11月10日の事。

それから「キャットウォーク・ロープ/床組」が設営され、ストランドの架設には人力ではなく、機械で引っ張り上げて架設された。

 

そして290本のストランドを架設した後に、塔間を結ぶストランドの垂れ下がり量(サグ)が均等になっているかを、温度が一定になる真夜中に測定し、慎重に架設していく。

 

 

290本のストランドが設計通りにキチッと架設された事が確認されると、「スクイジングマシン」という機械で六角形のストランド290束を円形に変えていく。

円形となった1本のケーブルに”ケーブルバンド”を所々に取り付けていき、それ以外の場所には直径4mm素線を隙間なく巻き付けていく「ワイヤーラッピング」が行われる。

更にその外側にゴムテープを巻きつけていき、最後にシンナーを塗布すると、巻き付けたゴムテープが1枚のシートに変化するという。

朋ちゃん
朋ちゃん

シンナー中毒には気を付けてね~!

 

ケーブルも橋毎に違う工法や構造となっており、ポルトガルの首都リスボンに流れるテージョ川に架設された「4月25日橋(Ponte 25 de Abril)は、建設中は予算不足だった為に道路だけの橋で完成したが、後になってから鉄道も渡れる橋に改造した為に、ケーブルを1本追加するという大工事が実施されたという。

 

この「4月25日橋」は1966年に開通し、その時代にポルトガルの独裁者であった「アントニオ・サラザール(António de Oliveira Salazar)の名前が付けられて「サラザール橋」と呼ばれていた時代があった。

 

そんなポルトガルでの長期独裁政権も、1974年4月25日に決起された『カーネーション革命(Revolução dos Cravos)という軍事クーデターで、サラザールによるヨーロッパでの最長独裁政権も終わりを迎え、その記念にこの橋の名前も変更されたという。

オカン
オカン

「1974年4月25日橋」でも良かったんちゃうの?

このリスボンに架けられている「4月25日橋」は、リスボンの中でも一番の観光地となっている世界遺産の「ジェロニモス修道院」や「ベレンの塔」、大航海時代の面影を残す「発見のモニュメント」から見える橋でもある。

江戸春男
江戸春男

この辺りは最もスリが多い場所なので、注意するぜい!

 

こちらはケーブルストランドがキャットウォーク設営後に、塔間に架設されていく様子を再現した「ケーブルストランド架設模型」※1/10スケール

 

ケーブルストランドの架設は「キャリアー」という機械で引っ張られていき、江戸時代に石橋などで大勢の人が背負ったり、引っ張ってたりする光景は見られない。。

江戸春男
江戸春男

怪我人が出ない、素晴らしい機械だぜい!

 

奥にあるのは「塔頂サドル模型」※1/10スケール で、高い主塔の上で変に折れないように、このようなサドルが設けられている。

また手前にあるのはケーブルから橋桁を支える為に吊り下げられた「ハンガーロープ」で、こちらは実物大のサンプルとなっている。

 

このハンガーロープはケーブル素線が85本束ねられた直径85mmのロープで、1箇所につき2本のロープが吊り下げて使われている。

 

こちらには明石海峡大橋で使われた1.122mのケーブルの「実物大断面模型」が展示されており、290本ものストランドが1本ずつ架設されていき、最終的には丸く締める機械でこのように綺麗な丸型のケーブルが出来上がるという。

 

橋建造の仕方など全く知識が無く、大きなケーブルは一気に架設したものだと勝手に思い込んでいたけど、この直径59.58mmのストランドが1本ずつ魂を籠められて架設されていた事を知れたのは、とても素晴らしい知識となった。

明石蛸一郎
明石蛸一郎

覚えたら、簡単には忘れないでタコ!

 

明石海峡大橋を車で通過するには僅か数分しか掛からないけど、この大きな橋を建造するには約10年の長い歳月が掛けられている。

そしてその10年という長い歳月には、橋架設に関わった多くの関係者の魂が籠められている橋なのである。

 

こんな旅はまた次回に続きます!

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明石&加古川旅(2023)

2023年1月下旬に訪れた、1泊2日の兵庫県:明石&加古川旅です。

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