九州縦断旅:大分編
旅行期間:2020年8月中旬
鉄輪温泉の秘湯
さて温泉街として全国的にも有名で、源泉数と産出量が全国イチと言われる別府にある多くの温泉。その中でもレトロな温泉街の雰囲気が漂う鉄輪温泉街に来ています。こちらの「鉄輪むし湯」は単なる温泉ではなく、鎌倉時代からの起源があるという蒸し風呂である。なおこちらの建物は2006年にリニューアルされているので、そんな鎌倉時代から続いているような雰囲気には少し見えない程に綺麗な建物である。
鉄輪温泉街にて
その現在「鉄輪むし湯」の建物がある向かい側の、こちらの小屋が元々鎌倉時代から続くむし湯だった場所。今ではここから少し移動した建物に移っているが、こちらは記念碑的な意味合いでその跡地が残されている。
そんなむし湯跡地には、野口雨情という大正~昭和初期に活躍した詩人・童謡作家の残した言葉が彫られた石碑がある。このむし湯とはサウナのように温泉源泉で温められた床の上に、薬草である石菖(せきしょう)の葉っぱを敷き詰めて、高温で薬草を蒸すと”テルペン(terpene)”という成分が放出される。その成分には鎮痛効果があり、痛みなどを和らげてくれるという。
そしてそのむし湯跡地の横には、このような小屋が建てられており、昔の僧侶みたいな人の像が設置されている。こちらの人物は「一遍上人(いっぺんしょうにん)」という、鎌倉時代にこの鉄輪温泉を開いた僧侶だそうだ。
なおこの「一遍上人(いっぺんしょうにん)」をモデルにした現代の世界を遊行する人物の映画が、2012年にウド鈴木主演で作られている。
一遍上人の湯かけ像
そんな「一遍上人」の像にこの鉄輪の温泉水を、自分の体の悪い部位目掛けて掛けると御利益があるそうな・・・。
目を閉じて静かに合掌している姿の「一遍上人」の像。こんな穏やかで静かな顔をしている像にお湯を掛ける行為はとても忍びないけども、思い切って頭からビシャビシャになる位にタップリと温泉を掛けておいた。硫黄などが入った温泉を毎日掛けられている割には、思ったよりもきれいな像だった。というのも近くにある永福寺という鉄輪温泉を祀る寺があり、そこで毎年「鉄輪温泉湯あみ祭り」という祭がこの辺りで行われ、その際などにこの像はキレイに磨かれるという。
こちらの説明板によると鎌倉時代の「一遍上人」がボロボロになりながらも全国に仏教を普及していく”遊行(ゆぎょう)”をしていた時に、地面から熱い湯気や熱湯が噴き出すこの鉄輪で住人たちがそれらに苦しんでいた所に出くわしたという。そんな困った住人たちが「一遍上人」に助けを求めた所、「一遍上人」によってその地獄は鎮まり、熱い湯気や熱湯などを逆に利用したむし湯などを生み出したという。
そんな歴史がある鉄輪温泉だけに、この「一遍上人」はここでは英雄的な存在なのである。今となってはすっかり人気の観光地となっている鉄輪温泉だけど、昔の人達はその利用価値が分からずに、農耕などが出来ない土地として苦しんでいたようだ。
ここが昔にあった「鉄輪むし湯跡」の名残。この説明によると昔は混浴になっていて、小さな蒸し窯が1つしかなかったようだ。温泉源泉を活かす知恵が無かった苦しむ住人達の元に、全国を行脚して色んな知見のあった僧侶がその知恵を授けた場所。
このようにやっぱり全国を旅して色んな知見を積む事が、とても大事であるという事を再認識するのである!
狭い地域で暮らしていると、頭が固くなってしまうけ!
鉄輪温泉街から吹き上がる湯煙 動画
そんな「一遍上人」についてお勉強したりしながら鉄輪温泉街を歩いていると、昔の建物をイノベーションしたようなお店や資料室があったのでちょっと寄り道してみる。
よく昔に造られた温泉街にある建物の雰囲気が、宮崎駿監督のジブリ映画の名作である『千と千尋の神隠し』で出てくる建物のモデルとなっているという話をよく耳にするけど、このような昔の明治時代などの写真を見ているとこの辺にも映画のモデルとなっているような建物だらけだった事が伺える。
確かに温泉街は鉄筋コンクリート製の新しい建物だと全然雰囲気が出ないが、このような昔の日本的な建物だと、とても寛げる雰囲気が出ている。そう思うのも日本人のDNAが、自分の体内に流れているからかもしれない。
鉄輪温泉のむし湯に並ぶ、ご婦人方の行列が見られる。現代のように色んなテクノロジーや科学が発達していなかった当時は、この温泉やむし湯などがリラックスできる限られた場所だったのだろう。
そんな温泉街でも人気のアイスクリーム。本当にアイスクリームは暑い時期はもちろんだけども、寒い時期にも食べる女性が多い。特に旅行中だと気が緩んでしまって、ついついアイスクリームが売られていると買ってしまうんだとか。。
渋の湯にて
こちらは「渋の湯」という共同浴場で、別府市民は無料で入れる温泉なのですが、一応それ以外の訪問客はコインロッカー代100円を使うという事が入浴料になっている珍しい形の温泉。
この安い入浴料金からもなんとなく分かる通りに、基本的には温泉内は無人で管理者は在中していない。なので銭湯内はセルフサービスでもし電気が点いていなかったら自分で点けて、出る時に他に人が居なかったら電気は消して出る必要がある。なお渋の湯に入った時は先客がいなかったので中を写真に収めたけど、このように脱衣所と湯舟の敷居はなく、”リーチ即湯舟”という別府の鉄輪温泉街。
そんな鉄輪温泉の名湯の1つに入って体を温めた後は、その裏にある鉄輪温泉を守る永福寺に立ち寄る。この寺がさっきの「一遍上人」が鎌倉時代にこの鉄輪温泉街を開湯した際に起源を持つ寺である。毎年行われる「一遍上人」像を洗う”鉄輪温泉湯あみ祭り”はこの寺で行われるのである。
そんな寺の敷地内には大きな龍の形をした像が置かれている。ただしこちらは湯掛けをする像ではなく、普通に鎮座している像である。
せっかく立派な像なんで「一遍上人」像だけではなく、この龍の像も一緒に湯掛けの願掛けをする像にしても面白いかなと思うけど、鱗があってデコボコとしていて表面を洗いにくそうだけども・・・。
さてとりあえず鉄輪温泉で1つ目の温泉に入った後は、次は案内してくれる”エロ坊主オジサン”が別府に来たら必ずと言っていいぐらいによく入る秘湯を紹介してやるとの事で歩き出す。
別府はオレのテリトリーやけ、付いてきな!
この2020年はコロナウイルスの影響で観光地でも昔から営業していたお店が経営不振になって、看板を降ろしてしまう店も沢山出たようだ。こちらのお店は訪れたこの日、月曜日が定休日だった為に閉まっていたようだ。
鉄輪温泉街の川に沿って進む道のガードレールには、このように手前側に材木が取り付けられている。あまり広くない道なので車を擦り易いからか、それとも川に落ちたら大変だからこのように補強しているのか?!
まあ何事にも理由はあるけど、単にブラブラしているだけだとこのガードレールの秘密までは分からなかった。さすがの”エロ坊主オジサン”もこのガードレールには無関心で分からないとの事。
よくそんな所まで見とるな~~、オレはそんなの全然気にならんけ~!
昔から大量の温泉源泉が湧き出る別府では、その産出する温泉水の1/3が温泉場などで使い切れずにこのように近くの川というか用水路に流されている。温泉などの無い地域に住んでいる人からすると何とも勿体ない話だけど、こんな狭い地域の中に沢山の共同浴場があり、一般家庭でも温泉を使っているにも関わらずに使い切れない程の源泉が湧き出ているという事実に少々驚く。
源泉が用水路に流されている景色 動画
オススメの秘湯「谷の湯」にて
そして”エロ坊主オジサン”が案内してくれた、鉄輪温泉街でもオススメの温泉がこちらの「谷の湯」。これだけ近くに沢山の温泉施設があると、どれがどれだか分からないような感覚になるけど、”エロ坊主オジサン”はここが気に入っているという。
住所:大分県別府市北中 北中公民館
【入浴時間】6:30~21:30 年中無休
【入浴料金】大人150円 子供50円
この谷の湯がある場所は「谷の湯通り」という狭い通りがあり、この鉄輪温泉街では端っこに位置しているので、一見の観光客はあまり来ずに知っている人しか中々立ち寄らないという名湯だそうだ。しかも別府地方でも最古の歴史を持つ温泉なんだとか。
さて温泉の入口へと向かうと、入口のガラスにはこのように張り紙がしてあるけど、実は入浴料はここで払うのではなく、上にある民家の軒先で払うシステムになっている。この辺りがなかなか一見では分かりにくいシステムでもある。
谷の湯の入浴料は左側にある、この民家の軒先で奥からオバチャンが出してきた筒に小銭を投げ入れるシステムだった。これは「コロナウイルスの感染対策かな?!」と最初は思っていたけど、これはたぶん家でテレビを見ているポジションから動きたくないという考えから生まれたようなシステムで前からこのスタイルで営業しているそうだ。だからこの鉄輪温泉街では大きな紙幣を払っても、両替やお釣りが出ない場合がほとんどなので事前に細かい小銭を用意しておく必要がある。
入浴料を支払って温泉内へと進んでいくと、簡素な内装が目に飛び込んでくる。温泉内には浴槽とこのように木で囲いされた簡単な荷物置きだけが用意されている。都会に住んでいる人からすると、このような簡素な内装には驚くだろうけど、この地方では温泉に入るだけならこれで充分なんだろう。
この谷の湯内もこのように”リーチ即湯舟”である。だから「鍵付きロッカールームに荷物を預けないと不安だな・・・」という気持ちも吹っ飛んでしまう。なぜならこのように湯舟に浸かりながら、自分の荷物を監視できるからである。
この簡素な内装がまた秘湯という雰囲気を創り出しているのかもしれない。まだ日本国内を全然回っていない自分だけに、このような質素な温泉の内装などに驚いてしまう自分がいた。。
まだまだ修行が足らんバイ!
そんな谷の湯奥には、このような不動明王像が祀られている。なお流石にこの不動明王像にはこの湯を掛けるのはダメそうな感じだった。
家庭内で温泉を使う分には許可は要らないけど、一応共同入浴場として営業するにはこのように許可が必要のようだ。
この別府にある鉄輪温泉街にはたくさんの源泉があるけど、てっきり全部一緒だと思っていたけど近くてもそれぞれに効能や成分などが違うという。そう思うと温泉もとても奥が深いものである。
全国には色んな温泉があるから、是非色々回ってみるのを勧めるよ!
男湯と女湯の間には簡単な木の板で遮られているだけで、その気になれば板の上から背伸びして女湯が見れそうな感じだった。でも覗きたくなるようなギャルの騒ぎ声は聞こえずに、数十年前にギャルだったと思われる人達の世間話が聞こえていた・・・。
入浴中には他の人が入って来なかったので、”エロ坊主オジサン”と2人だけの貸し切り状態だった秘湯「谷の湯」を満喫するのであった。
オレのオススメだけ温泉だけあって、良かったやろ!
こんな旅はまた次回に続きます!
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