琉球時代の浦添城跡が残るハクソーリッジで、日本軍兵士の慰霊碑を拝む【沖縄旅行記㊻】

沖縄旅行記2020年秋-㊻

 旅行期間:2020年11月11日~14日(3泊4日)
(Visit Hacksaw Ridge, where the ruins of Ryukyu-era Urasoe Castle remain, to see the cenotaph for Japanese soldiers. [Okinawa Travelogue 46])

南無阿弥陀仏。。

ここは沖縄県浦添市にある、1945年の沖縄戦で最も激しい戦地となったとされる「ハクソーリッジ/前田高地」と呼ばれている場所。かつては浦添城があった高台に日本軍が陣地を築き、徹底抗戦をした場所となっているが、意外と日本人には知られていない場所である。

 

 

 

ハクソーリッジ/前田高地にて

そんなボクもこの場所を知ったのは、数年前に観た1つのアメリカ映画からである。その映画は沖縄を攻める米軍に従軍した実在の衛生兵であった「デズモンド・ドス (Desmond Thomas Doss)」に焦点を当てたものだった。その映画の中でデズモンド・ドスは”良心的兵役拒否者”という、銃を持たずに戦場に参加するという主義の持ち主だった。

 

”良心的兵役拒否者”というのは国の為に戦争に参加はするが、「その参加した戦地で人は殺さない」という考えを持った兵士の事を差す。デズモンドは宗教的な問題で敵であろうとも殺すのは出来ないと主張したが、戦争という行為は殺し合いなので、武器も持たずに戦場に乗り込む兵士に対して、軍隊では徹底的に差別された様子が映画の中で描かれている。

 

 

決定版“2分でわかる”映画『ハクソー・リッジ』特別映像

 

 

デズモンドは実際に武器を携帯せずにグアムやレイテ島の戦いに参加した後に、ここ沖縄戦にも参加する。そしてここで負傷したアメリカ軍兵士を75人も救出した功績が認められ、”良心的兵役拒否者”としては初めて名誉勲章を贈られる事になる。

 

 

ハクソーリッジの今 動画

 

 

そしてかつて激しい戦地だったハクソーリッジの景色を脳内で映画の記憶を参考に妄想していると、後ろから物音が迫ってきてボクの足元にブツかってきた。こんな場所で人間以外にブツかってくる生き物なんてハブしか思い浮かばなかったので、思わずビビッて冷や汗を掻いてしまったけど、恐る恐る振り向いてみたらブツかってきたのはこちらのワンちゃんだったのである。。

犬は放し飼いにしないでください・・・(笑)

 

そして浦添城跡にもなっている、この芝生の広場を見回すと、その中心部付近にこちらの大きな木と共に、何かの遺構跡のような場所が見える。なお、ここは近くに米軍基地もある事から、多くのアメリカ人が映画を観た影響で訪れるようになったという。聞くところによると、日本人以上に米軍関係者がこのハクソーリッジを訪れて、勇敢に戦った日本軍兵士の慰安に来ているとか。

 

 

「ディーグガマ」にて

この「ディーグガマ」とは、この辺りの地中にあった鍾乳洞が崩れてできた窪地で、デイゴの大きな木が生えていた事もあって聖地として地域住民に祀られていた場所のようだ。なお、沖縄戦時には近くの住民達がこの周辺の洞穴に潜めていた場所でもあるようだ。

 

そんなかつての聖地も沖縄戦後には、戦争で亡くなった人達の慰霊碑が造られている場所となっており、自然と一体化したような墓地になっているようにも見える場所ともなっている。

 

なおこの前田高地の洞穴などは崩れ落ちる危険性が高いので、どこも立ち入る事が出来ないようになっている。またこの辺りの洞窟がどれだけ地下の塹壕に繋がっていたなどは詳しくは分からないけど、数千人の兵士が亡くなっているので、それなりに大きな規模だったのかもしれない。

 

そんな入れない洞穴の前には、戦死者を弔う為に千羽鶴などが置かれているのが見える。現代人には戦争が行われていた時代に生きていた人がとても少なくなっているけど、ここ日本でも多くの戦死者が出ているという事実に向き合う必要がある。

 

こちらの洞穴の奥には入れないけど、その入口付近からは穴の奥に慰霊碑が設置されているのが見える。数年前に『ハクソー・リッジ』の映画を観なければ、恐らくこの場所を見学しに来る事はまず無かったと思う。そう思うと、単なる映画を1つ鑑賞しただけで、色んな出来事が派生していく。

 

事実を基にした映画と言っても、その大半はあくまでもエンターテインメントなので、実際よりも大きく脚色されて観客にウケやすいように作られている事が多い。ただこの『ハクソー・リッジ』の映画を監督したのは、『マッドマックス』シリーズで有名になった俳優のメル・ギブソンで、彼は1995年公開の『ブレイブハート(Braveheart)』という作品で、リアルな描写にこだわった作風が評価されて、アカデミー監督賞も受賞している。

 

日本軍兵士役キャストと記念撮影をするメル・ギブソン

日本軍兵士役キャストと記念撮影をするメル・ギブソン

この『ハクソー・リッジ』はオーストラリアがロケ地で、日本国内では撮影はされていない。しかし海外で撮影した作品ではありながら、日本兵の一部には日本人キャスト(日系含む)を採用しており、映画中に聞こえてくる日本語の発音はしっかりと日本人に分かる日本語となっていて、その言葉を聞いた時にちょっと嬉しくなった。というのもハリウッド映画の多くに日本人役として出ているのは、大体中国系や韓国系のアジア人が多くて、日本人からすると日本人に思えない人が演じている場合が多いからである。

琉球姫
琉球姫

最近は日本人俳優がキャストされるアメリカ映画が増えたよね!

 

ただこの前田高地を訪れた人でも、ボクのように『ハクソー・リッジ』 の映画を観て興味を持った人間からすると、その映画内でのシーンが頭にこびりついているけど、その映画内で描かれていた前田高地が現実そのままにあった訳ではなくて、あくまでも映画内で再現した景色である。だから映画を観てしまった人からすると、如何にもそのシーンが思い浮かんでしまうけど、その固定観念を脇に置いて見学する必要もあるかもしれない。

 

1945年の沖縄戦では、日本軍側の戦死者は地元住民も含めて約19万人(半数が地元住民)だったそうだ。それに対してアメリカ軍の戦死者は約1万人強で、負傷者は約7万人前後だったようだ。ただアメリカ軍の負傷者の多くはPTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされた人が多かったらしく、アメリカ軍にとっても悲惨な場所だった沖縄の地。

 

このように未だに慰霊碑が飾られている前田高地にやって来るアメリカ軍の兵士達は、どんな心境でこの地を見学しているのだろうか? それは逆にハワイで未だに沈みながら重油を流し続けている、戦艦ミズーリ号を見ている日本人と同様の心境なのかもしれない。

 

 

約20年前に兄の結婚式が行われる為にハワイを訪れた事があるけど、その際に戦艦ミズーリ号が沈んでいるのを実際に見た記憶があるが、その当時は青二才だったので特に何も感じなかったような気がする・・・。

オカン
オカン

今もまだ青二才やで!!

 

戦争の悲惨さは、実際に体験した人にしか分からない。他の体験も実際に経験した事実と模擬体験を比べてみると、実際に経験した事実にはどうしても敵わない。いくら戦争を再現した映画やVTRを見ても、あくまで雰囲気しか理解できない。

 

その為に戦争を知らない世代は、簡単に「いざとなったら戦争をしても構わない!」という考えを持ちやすい。今の日本でもそういった戦争擁護の声も出てくる事があるらしいけど、ただ戦争になったからといって自分が武器を持って最前線に赴く訳でもないだろうに。。

 

今の沖縄では戦争から時が経ち過ぎたので、このように戦争の悲惨さが可視化できる景色は殆ど消え去ってしまっている。だけど戦争体験者の声などを聞くと、その悲惨さの一部でも理解でき、戦争の無い時代に生まれ育っている事の幸せさを感じる。

 

この場所はかつて浦添城という琉球時代の城跡だったので、このように石垣が積まれている部分も見られる。ただ、ここが砲艦射撃を沢山浴びた場所だとすれば、このような石垣はほぼ破壊されてしまっているので、恐らく戦後に復元された物だろうが。

 

この浦添城は第一尚氏王統が成立する以前の国王が居城としていた場所だけど、その後に第二尚氏王統で全盛期を築いた3代目国王「尚 真王」の長男であった尚維衡が、浦添家として居城にしていた場所でもあった。この尚維衡は3代目国王:尚 真王の長男なので世子で王位を継ぐハズだったのであるが、尚 真王の母親の策略で廃摘にされてしまい、王位を継げなかった。

 

というのも3代目国王:尚 真王の前の、2代目国王:尚宣威王の娘が尚維衡の母親だった。尚 真王の母親は自分の息子を王位に就かせる為に、2代目国王:尚宣威王を半年で王位から退かせる策略を行ったという説がある。そんな尚宣威王を嫌っていた尚 真王の母親は、尚宣威王の血を受け継ぐ尚維衡を次の王位に就かせたくなかったとされているようだ。

琉球姫
琉球姫

どこでもロイヤルファミリーは大変なんだね・・・

 

そしてこちらの広場の一部には、「愛國知祖之塔」という戦後に愛知県沖縄戦遺族会が建立した慰霊碑が設置されていた場所の跡地もある。

 

この「愛國知祖之塔」は1994年に糸満市の平和祈念公園に移設されているので、今ではそんな慰霊碑はなくて、何かのイベントが行われる檀上のような景色になっている。

 

せっかく土台だけコンクリートで造られているので、空いたスペースのここに日本軍兵士の銅像や、映画『ハクソー・リッジ』の主人公となったデズモンド・ドスの銅像などを設置してもいいかなと思うが。。

 

浦添城跡の城壁

そして西側の方に歩いて行くと、このように浦添城跡らしい城壁が見えるようになってくる。しかし、この周辺は立ち入れないように柵がしてあり、外から眺めるだけとなっていたが。

 

この石垣は見て分かるように綺麗な石なので、近年に新しく復元して造られた物となっている。この石垣の積み方は「布積み(豆腐積み)」と呼ばれるように、琉球石灰岩を加工して綺麗に積み上げた方法となっている。

 

ただこの辺りにかつて存在していた城壁の石は、戦後に地元住民などが採石したりして持って行ってしまったので、殆どこのような城壁という感じの景色は消え去っていたようだ。

琉球姫
琉球姫

こんな場所で散らかってるより、家の石垣に再利用されたのね!

 

ただし、この付近で発掘調査を行った所、その城壁の土台が地中から発見されたので、それを参考にして徐々に城壁を復元していっているようだ。このようにその姿を失っていた浦添城も、徐々にそのかつての姿を取り戻しつつあるようだ。

 

こんな旅はまた次回に続きます!

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